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路上で逆ナンされて、 まんまと家にお持ち帰りされた話。

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日曜の夜に路上で逆ナンされて、
まんまと家にお持ち帰りされた話です。
こんな事ってあるんですね。

日が落ちても蝉が泣いている暑い夜。
ご飯を食べに行く途中、家を出て3分ほどの路上で声を掛けられた。

相手は白髪の老婆。腰が直角に曲がった老婆。
ホームレスの風貌と小便の匂い。顔は汗だく。
ガードレールに右手をかけ、左手で杖をついて、
辛うじて立っている状態。その場から動けない。

か細い声で助けを求めていた。

耳を近づけて話を聞くと、
通りを挟んだ向かいにある家に帰りたいのだそう。
幅員は5m程だが、支えがなく道路を渡れないらしい。

触るのを躊躇う匂いだが、
覚悟を決めて老婆を抱き上げた。

これが尋常じゃなく重かった。

持ち上げた時、老婆はもの凄く痛がり
うめき声を上げていた。

怖い目をしていたので怒っていたかもしれない。

急に不安になった。
当たり屋のようなシナリオがあって、
それに巻き込まれた気分になった。
関わって失敗したと思った。

やはり重くて運べない。
1、2歩進んだが、元の場所に降ろした。

結局、老婆に歩いてもらうため、
手を貸して支えることにした。

5mほどの道路を渡るのに
3分くらい掛かった。スローモーション。
幸いにも車は通らなかった。

老婆の杖にはビニール袋が掛けられ、
500mlのペットボトルの水が入っていた。
喉が渇いたので水を買いに出掛けた帰りなのだそう。

水。

道路を渡り、何度も前を通ったことがある古いマンションへ入った。
郵便受けを開けてくれと頼まれた。部屋番号は40x。
まさか1Fに住んでいないとは。

郵便受けには、チラシが1枚入っていた。
老婆に手渡したが、チラシを持つと杖をうまく持てない。
よく見る販促のチラシだったので、捨てておきますと伝えて預かった。

さすがにエレベーターはあった。丸くて厚みのある「開」ボタン。
老婆いわく、エレベーターが到着してから乗るまでの間に扉が閉まるので、
エレベーターが怖いらしい。
乗ろうとする時、杖の先がエレベーターと床の隙間に入りそうだった。
エレベーターの中で向きを変えることも出来ない。
確かに怖そうだ。ここで暮らすのは無理すぎる。
でも、ここに何十年も住んでいるらしい。

家へと向かう。
鍵を渡されたので開けた。玄関ドアの鍵穴に鍵を挿すのが困難らしい。
家の中を見ると、どうやら一人暮らしではないようだ。
土間に男性用の靴、テーブルの上にタバコが置いてあった。

靴を脱げないので、手伝って脱がした。
小学生が履くような白いズック。踵に名前が書いてあった。
靴下は履いていない。脱ぐと裸足。爪は伸び、指先は変形していた。

靴を靴箱に仕舞えないので手伝った。

土間と廊下の3cmほどの段差に躓き、
老婆は転んだ。3cm足を浮かすのが困難。
転んだ老婆を起こすと、玄関の鍵を渡された。
土間を歩くのが大変で、内側から鍵を閉められない。だから外から鍵を掛け、新聞受けに落として欲しいとの事だった。

ペットボトルのキャップを開けられない気がしたので緩めて渡した。
外から鍵を掛けた。鍵は新聞受けに入れた。

家から3分の異世界。初めて「孤独死」を身近に感じた。
行動に正解はあったのか。役に立てたのか。解決した問題はあるのか。まずは水を飲ませるべきだったのではないか。今日になっても考えてしまう。
一人暮らしではないのに、飲み水も用意されていない。風呂にも入っていない。トイレも不自由。だれも老婆を助けていない。

その後は、予定通りレストランに行きました。
念入りに手を拭いてから、いつもどおりに食べましたよ。
そんなもんなんです。自分は。